公開日:2019年12月11日 最終更新日:2022年6月20日
この記事は、DTP Advent Calendar 2019の11日目の記事です。11日の水曜日(だから何)
「アンカー付きオブジェクトの基準位置」の設定での「テキストフレーム」と「列枠」の違いをとり扱い、これらの設定の違いで、オブジェクトがどこに来るのかを明確にしておきます。
アンカー付きオブジェクトを[カスタム]で挿入した場合、①[アンカー付き位置]で設定した座標に②[アンカー付きオブジェクト]の[基準点]が来ます。
作例では、図のように決定されています。
作例では、[アンカー付き位置]の[X基準]に[列枠]を設定していますが、これには「X基準をテキストフレームにすると、複数段の場合オブジェクトをうまく揃えられないことがある」という理由があるからです。
InDesignで複数の段をもつドキュメントを作成するときには、
の2つの作り方がメインとなります(段落スタイルで段分割という手もありますがあれは複数段を一部に作る機能なので割愛)。作例ではテキストフレーム設定によって複数段にしています。このドキュメントに挿入されているアンカー付きオブジェクトたちの設定を変更し、[アンカー付き位置]の[X基準]を[テキストフレーム]に変更すると…
アンカー付きオブジェクトの位置が意図しない位置に変わってしまいました。オブジェクトスタイルでまとめて設定を変更したので、非常に悲惨な状態になっています。
なぜこのような状態になったかというと、アンカー付きオブジェクトでは下図のように、[テキストフレーム]はフレーム全体の幅、[列枠]は一段ごとの幅で解釈されているからです。
[列枠]では、段分割や段抜き、フレーム内マージン設定も反映されます。
プロパティ | 列枠への影響 |
---|---|
左右インデント | なし |
テキストフレーム内マージン | あり |
段抜き | あり |
段分割 | あり |
左右インデントは[列枠]使用時には何も起きませんが、[アンカー付き位置]の基準が[アンカーマーカー]のときにはインデントした分オブジェクトが移動します。
[列枠]はフレームの設定から、[アンカーマーカー]は段落や文字の設定から影響を受けるということになります(アンカーマーカーについては、この記事では 詳しく 触れません)。
Y基準は[仮想ボディの中央][ベースライン]など、文字揃えでも使う設定が多いのでわかりやすいですが、X基準が指す位置は「アンカーマーカー」「列枠」などアンカー付きオブジェクトでしか使わない値が多い(Y基準にもあるけども)のでやや分かりづらいので、どこを指すのか抜粋しました。
先日発表されたInDesign 2020で、段間罫線が実装されました。この機能はテキストフレーム設定から段組みを設定したものでないと動かないので、これからはフレームを連結して段組みを作るよりもテキストフレーム設定から段組みを作るのが増えそうです。
合わせて、 段組みの作り方またはアンカー付きオブジェクトの設定によっては、レイアウトが崩れるかもしれない状況も一つ増えることになりました。
その中で、複数段のドキュメントにおいてアンカー付きオブジェクトを本文の一連の流れに置く場合は「アンカー付き位置のX基準は列枠」を心がけると、どちらのケースでも対応できてデータの汎用性がアップします。
アンカー付きオブジェクトは、文章量の増減に対応し移動してくれるので、ページ数の多いドキュメントの場合非常に便利な機能です。置いた後に手動で動かしてもいいんですが、ビシッと設定を決められるようになると、オブジェクトスタイルに登録しての使い回しができて大変作業の進行が早くなります。アンカー付きオブジェクトを活用して、少しでも楽しいDTPライフを!
この記事で使用した作例のinddファイルです。InDesign 2020で作成しています。それより前のバージョンの場合は、同梱しているidmlを使用します。
InDesign:文字と一緒に移動して欲しい画像の扱い(2)